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「鱗の輝き」-料理長の昭和日記 【昭和37年3月5日】

今日は驚いた!高校時代に同じクラスだった門前さんに会った。女は変わるものだ。「主人です」新婚旅行で勝浦に来たとのこと。余りの偶然と思いかけない出会いに、気の利いた言葉なんか出なかった。
来月から16才の新人が入るらしい。俺にも下に2人も部下がいることになるんだ。しっかりしないと。

昨日はおやっさんの新聞を買いに駅まで行ったとき、「玉置さん!玉置さんと違います?」と声をかけられた。振り返って声の主を見ても、すぐには同級生とは分からなかった。確かに知っている人なのに。
「高校のとき一緒だった門前です。お元気ですか。」そう云いながら私の姿をなめるように見ている。

薄汚れた白衣を着て、まだ自分の仕事に誇りをもてない自分が情けなかった。男の私はまだ人生を歩き出したかどうかはっきりしないのに、女の人生の流れは早いらしい。
クラスでもごく普通の存在だった彼女が結婚したといわれて、それに比べて自分が何であるかさえ説明も出来ない私には惨めな思いだけが残った。

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